国内外のメーカーから、様々なオーディオインターフェイスをチェックをしているが、しばらく取り上げていなかったのがM-Audioだ。先日、そのスタンダードモデル「AIR 192 | 6」を入手し、試すことができた。
192kHz/24bit対応の2in/2out仕様で、税込みの実売価格が16,500円前後と手ごろこの機材。どのような機能を持ち、また性能的にはどの程度のものか、チェックしてみた。
inMusicの1ブランド「M-Audio」。シリーズ名はM-TrackからAIRへ
ご存知の方も多いと思うが、オーディオインターフェイスメーカーの老舗であるM-Audioは、さまざまな変遷を経て、現在はinMusic(インミュージック)というアメリカの会社の中にあり、国内の発売元もinMusic Japanとなっている。以前のAvid Technology時代もそうだが、M-Audioという企業は存在せず、inMusicが持っているブランドの一つとなっている。
inMusicが持つブランドは、M-Audio以外にも「AKAI Professional」「DENON DJ」「DENON Professonal」「Marantz Professional」など日本をルーツとするブランドもいろいろあるほか、「AIR」「Alesis」「iON」「Numark」「Rane」「SONiVOX」「Stanton」など、「え? ここもinMusicだったの?」と思う有名ブランドが数多くある。つい最近では、ドラム音源として著名な「BFD」もinMusic入りしたばかりで、まさにオーディオ、DTM、DJのコンツェルンのようなメーカーだ。
さて、M-Audio現行のオーディオインターフェイスが「AIR」シリーズなわけだが、ラインナップは下記のようになる。
- AIR | Hub(実売10,000円):3ポートUSBハブ搭載 再生専用USB/USB Cオーディオ・インターフェイス
- AIR 192|4(実売14,400円):2in/2out USB/USB Cオーディオインターフェイス
- AIR 192|6(実売16,500円):2in/2out USB/USB Cオーディオ/MIDIインターフェイス
- AIR 192|8(実売価格24,000円):2in/4out USB/USB Cオーディオ/MIDIインターフェイス
- AIR 192|14(実売39,000円):8in/4out USB/USB Cオーディオ/MIDIインターフェイス
以前あった「M-Track」シリーズをリニューアルし、名称もAIRというinMusicのソフトウェアブランドの名前を冠したものとなっている。このうちAIR 192 | 4も、AIR 192 | 6も、2in/2outという仕様だが、AIR 192 | 4はマイクプリアンプが1つでMIDI入出力がない。AIR 192 | 6はマイクプリアンプ2つでギター入力も2つ、またMIDI入出力も装備したモデルとなっている。
特徴的なのは、オーディオインターフェイスに多いハーフラック型ではなく、テーブルトップ型になっていて、中央に大きなボリュームノブが搭載されている点。直径5cmのこのノブのトルクは重めで、側面がラバー加工されているのは、オーディオ用として見てもグッとくるところ。
端子はフロントの左側にギター入力が2系統、ヘッドホン出力が1系統ある。またリアは右側にマイク/ライン入力兼用のコンボジャックが2つ、中央にTRSフォンのメイン出力が2つ、右にMIDI入出力が1つずつ用意されている。
一番右にはUSB-C端子があり、これをWindowsやMacと接続して使用する。付属品としてUSB-Cケーブル、USB-C/Aの変換ケーブルが1本ずつ用意されているので、各種PCとの接続が可能。ちなみにUSB-C接続ではあるが、信号的にはUSB 2.0となっている。
AIR 192 | 6はUSBクラスコンプライアントなデバイスであるため、Macにおいてはドライバ不要で動作し、Windowsの場合はM-AudioサイトからドライバをダウンロードしてインストールすることでASIOでも利用可能。また電源はUSBバスパワーからの電力で駆動する。
トップパネルには大きなノブのほかに小さなノブが4つある。中央の大きなノブはメイン出力用で、一番右側にあるヘッドホン出力用とは独立している。その間にあるUSB/DIRECTはUSBからの音とダイレクトモニタリングのバランスをとるもの。
左側にある2つは、2chある入力プリアンプのゲイン調整用。入力に対し、4段階でLEDが光る入力レベルメーターもステレオで用意している。
ちなみに、フロントとリアにある入力は排他仕様。フロントのギター入力が優先で、両方刺さっている場合はフロントが有効になる。リアのマイク入力にコンデンサマイクを接続した場合は、フロントにあるファンタム電源スイッチを入れることで+48Vが供給・使用できるようになる。
手頃なオーディオインターフェイスでは十分な性能。バンドルソフトも充実
早速、いつものように音質測定ツールのRMAA Proを使って見ていくことにしよう。
ここではリアのメイン出力をリアのライン入力にループバックさせた形で接続。ケーブルにはTRSフォンを使ったバランス接続としている。大きいノブを最大限右に回し切った状態で、入力ゲインは左に回し切った最小の状態で入出力ともに0dBの状態になるようなので、この状態で、44.1kHz、48kHz、96kHz、192kHzのそれぞれで測定した結果が以下のものだ。
前回(第873回参照)取り上げたRME Firface UCXのような高級機と比較すると音質的に物足りない面はあるのは事実だが、一般的なオーディオインターフェイスとして見れば及第点だろう。
では、レイテンシーにおいてはどうだろう?
いつもと同様にループバックさせた形で各サンプリングレートで実験してみた。この測定において各サンプリングレートごとにバッファサイズを最初に設定し、44.1kHzのときのみは最小値のほかに128サンプルの状態でも測定している。結果は以下の通りだ。
見ていただくと分かるとおり、すべてのサンプリングレートで最小のバッファサイズは16サンプルに設定できる。
M-Audioサイトにおいては「2.59ms※という低レイテンシーを実現(※レイテンシーはバッファ設定及びコンピューターの仕様に依存します)」と記載されていたが、今回の実験においてはこの値を再現することはできなかった。筆者の実験環境においては192kHz時で3.03ms。まあ、誤差のうちといってもいいかもしれない。
なお、今回テストをしたのは11月14日にアップデートをかけたばかりのWindows 10 Proの20H2というバージョン。この最新バージョンのWindowsで試してみた限りは、問題なく動作するようだった。
今回使用しているAIR 192 | 6は、数多くのソフトをバンドルしているのも大きな特徴。
まずDAWとしては「Pro Tools | Firest M-Audio Edtion」のほか、「Ableton Live 10 Lite」も付属している。正確には、パッケージ内にはDVD-ROMなどが入っているわけではなく、M-Audioサイトにユーザー登録することでダウンロードできるようになっている。
さらにギターアンプシミュレーターの「Eleven Lite」、AIRのエフェクトセットである「AIR Music Tech Creative FX Collection」、ソフトウェア音源の「Xpand! 2」「Mini Grand」「Vaccum」「BOOM」……などなど、さまざまなものが揃っているのだ。ある意味、このバンドルソフトだけでも十分元が取れそうな内容になっている。
AIRシリーズは、コロナ禍でのオーディオインターフェイス需要の高まりに伴い、しばらく入手困難な状況が続いていたが、最近になりようやく供給量が追い付いてきたようで、入手しやすくなってきている。
ただ、先日のAKMの工場火災によって、各社ともオーディオインターフェイスの生産が難しくなることも予想されているので、必要あるのであれば、今のうちに入手しておくのがよさそうだ。
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